複利計算の完全ガイド【72の法則・NISAシミュレーション】

高橋 健太 (Kenta Takahashi)
金融機関での実務経験を活かし、難しい税金や社会保険の仕組みを「誰にでも分かりやすく」解説することをモットーに活動しています。CalcEasyでは、ユーザーの皆様が自分のお金や制度について正確にシミュレーションできるよう、コンテンツの監修とツール設計のサポートを行っています。

100万円を年利3%で30年間放っておくだけで、243万円になる。 何もしていないのに143万円のボーナス。これが複利の力です。
「複利ってよく聞くけど、単利と何が違うの?」「結局、投資は何年続ければいいの?」—— この記事では、そうした疑問にひとつずつ答えながら、 新NISAやGPIFの実績データも交えて、複利を味方につけるための知識を整理していきます。
お金が勝手に増える?複利のシンプルな仕組み
複利とは、元本だけでなく利息にも利息がつく計算方式です。 一方、単利は元本にのみ利息がつく方式で、運用期間が長くなるほど複利との差が拡大します。
| 項目 | 単利 | 複利 |
|---|---|---|
| 利息の計算 | 元本のみに計算 | 元本+利息に計算 |
| 計算式 | PV × (1 + r × n) | PV × (1 + r)ⁿ |
| 100万円・年利3%・30年 | 190万円 | 約243万円 |
💡 ポイント:アインシュタインが「人類最大の発明は複利だ」と言ったとされるほど、 複利の威力は時間とともに指数関数的に増大します。運用期間が長いほど効果が大きくなります。
複利の基本公式
一括投資(年複利):FV = PV × (1 + r)n
複利頻度を考慮:FV = PV × (1 + r/k)nk(k = 複利頻度:月複利なら12)
実質年利の求め方:R = (1 + r/k)k − 1
PV = 元本、FV = 将来価値、r = 年利、n = 年数、k = 複利頻度

(複利と単利の成長曲線の比較)
ところで、複利の頻度はどのくらい結果に影響するのでしょうか。 年利5%・100万円を10年運用した場合、年複利で約162.9万円、月複利で約164.7万円と、 差は約1.8万円です。理論上は頻度が高いほど有利ですが、 投資信託であれば基準価額に日々反映されるため、個人投資家が複利頻度を意識する場面は実は多くありません。
「72 ÷ 利回り」で未来が見える
72の法則は、お金が2倍になるまでのおおよその年数を暗算で求められる便利な法則です。 覚えておくと、飲み会の席でも使えます。同様に、積立投資や3倍到達の法則もあります。
| 法則 | 公式 | 用途 | 3%の場合 | 5%の場合 |
|---|---|---|---|---|
| 72の法則 | 72 ÷ 利回り(%) | 一括→2倍 | 24年 | 14.4年 |
| 126の法則 | 126 ÷ 利回り(%) | 積立→2倍 | 42年 | 25.2年 |
| 115の法則 | 115 ÷ 利回り(%) | 一括→3倍 | 38.3年 | 23年 |
| 190の法則 | 190 ÷ 利回り(%) | 積立→3倍 | 63.3年 | 38年 |
72の法則で計算してみる
問い:年利5%で運用した場合、100万円が200万円になるのは何年後?
答え:72 ÷ 5 = 約14.4年
(実際の計算:100万 × 1.0514.4 ≒ 201.5万円)
ちなみにこの法則、精度はどうなのか。年利1%〜10%の範囲では非常に高い精度で近似できます。 たとえば年利3%なら 72 ÷ 3 = 24年ですが、実際には約23.45年で2倍になるため、誤差はわずか約2.3%。 ただし年利が20%を超えるとズレが大きくなるので、そういったケースでは計算ツールを使うのが確実です。
新NISAは「非課税の複利マシン」
2024年から始まった新NISAは、運用益が無期限で非課税となる制度です。 通常なら約20%取られる税金がゼロになるわけですから、 複利効果を最大限に活かすための器としてはこれ以上のものはありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| つみたて投資枠 | 年間120万円 |
| 成長投資枠 | 年間240万円 |
| 合計年間投資枠 | 最大360万円 |
| 非課税保有限度額(生涯) | 1,800万円 |
| うち成長投資枠 | 1,200万円 |
| 非課税保有期間 | 無期限 |
| 枠の再利用 | 売却後翌年以降に簿価分復活 |

(新NISAを活用した複利運用のイメージ)
具体的にどのくらい増える?シミュレーション
| 毎月の積立額 | 運用期間 | 想定利回り | 元本 | 運用結果 | 運用益 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1万円 | 30年 | 3% | 360万円 | 約580万円 | +約220万円 |
| 3万円 | 20年 | 3% | 720万円 | 約985万円 | +約265万円 |
| 3万円 | 30年 | 3% | 1,080万円 | 約1,748万円 | +約668万円 |
| 5万円 | 20年 | 5% | 1,200万円 | 約2,055万円 | +約855万円 |
| 10万円 | 15年 | 5% | 1,800万円 | 約2,672万円 | +約872万円 |
※ 運用益は税引前の概算値です。NISAを利用した場合、運用益は非課税です。
NISAとiDeCo、よく比較されます。どちらも運用益が非課税なので複利効果は同等ですが、 iDeCoは掛金が全額所得控除になるため、節税効果を含めると有利な場面もあります。 ただし60歳まで引き出せない制約があるので、 流動性を重視するならNISA、節税を最大化するならiDeCoとの併用が現実的な選択肢です。
GPIFの23年間が証明していること
「長期投資は本当にうまくいくのか?」——そう疑う人にとって、 日本の公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の実績は ひとつの答えになります。
| 項目 | データ(2025年12月末時点) |
|---|---|
| 運用資産総額 | 293兆4,276億円 |
| 年率収益率(2001年度〜) | +4.71% |
| 累積収益額 | +196兆3,721億円 |
| 資産配分 | 国内債券25%・外国債券25%・国内株式25%・外国株式25% |
💡 GPIFの年率+4.71%を先ほどの72の法則に当てはめると、 72 ÷ 4.71 ≒ 約15.3年で資産が2倍になる計算です。 リーマン・ショックやコロナ禍を含む23年間でこの成績。長期・分散・複利の力がよくわかります。
預金だけだと、実はお金が減っている
複利で増やす話をしましたが、逆に「何もしないリスク」にも触れておかなければなりません。 複利計算では、名目金利だけでなくインフレを考慮した実質金利が重要です。
| 項目 | 現在の水準 |
|---|---|
| 政策金利(無担保コールレート) | 0.75% |
| 普通預金金利(メガバンク) | 年0.3% |
| 定期預金金利(平均) | 年約0.259% |
| 消費者物価上昇率 | 約2.1% |
| 実質金利(名目 − インフレ) | −1.35% |
※ 2026年3月時点のデータです。
フィッシャー方程式:
実質金利 = 名目金利 − 期待インフレ率
現在:0.75% − 2.1% = −1.35%
→ 預金金利が物価上昇率を下回っているため、預金だけでは実質的に資産が目減りします。
つまり、銀行にお金を預けているだけでは、数字上は減らなくても買えるものが少しずつ減っていく。 「貯金しておけば安心」は、残念ながら今の日本では通用しなくなっています。
複利は「敵」にもなる
ここまで複利の「味方」としての顔を見てきましたが、借金の世界では一転して最大の敵になります。
たとえばクレジットカードのリボ払い。年利15%で計算すると、 72 ÷ 15 = 約4.8年で借金が2倍になります。 50万円のリボ残高が、気づけば100万円に膨らんでいる——これは珍しい話ではありません。
⚠️ 覚えておきたいこと:投資では複利を味方に、借金では早期返済を。同じ仕組みが、立場が変わるだけで正反対の結果を生みます。 リボ払いや消費者金融の利息は複利で計算されるため、追加借入を止めて一日でも早い返済が重要です。
では、何から始めればいい?
金融庁が推奨する資産形成の3原則は、複利を味方につけるための基本でもあります。
長期投資
複利効果は時間とともに加速します。20年、30年の長期運用が資産形成の鍵。
積立投資(ドルコスト平均法)
毎月一定額を積み立てることで、購入価格を平準化し、高値掴みのリスクを軽減。
分散投資
国内外の株式・債券・不動産に分散し、リスクを抑えながらリターンを追求。
とはいえ、「何年続ければいいのか」が気になるところだと思います。 一般的に10年以上の運用で複利効果が顕著になり、 20年以上では元本を大きく上回る運用益が期待できます。 金融庁のデータでも、20年以上の長期積立投資では元本割れの確率が大幅に低下するとされています。 逆に言えば、始めるのが1年遅れるだけで、30年後の結果には大きな差が出るということです。
複利の力は、知っているだけでは意味がありません。 月1万円からでもいい。小さくても今日始めた1歩が、30年後の大きな差になります。
【免責事項】
本記事の内容は2026年3月時点の情報に基づきます。 シミュレーション結果は将来の運用成果を保証するものではありません。 投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります。 投資判断はご自身の責任で行ってください。
参考資料
- ・金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」
- ・GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)「2024年度の運用状況」
- ・日本銀行「金融政策に関する決定事項」
- ・日本証券業協会「投資の基礎知識」