賞与の源泉徴収税を完全解説【2026年版】

高橋 健太 (Kenta Takahashi)
金融機関での実務経験を活かし、難しい税金や社会保険の仕組みを「誰にでも分かりやすく」解説することをモットーに活動しています。CalcEasyでは、ユーザーの皆様が自分のお金や制度について正確にシミュレーションできるよう、コンテンツの監修とツール設計のサポートを行っています。

同じ100万円のボーナスでも、人によって手取り額には10万円以上の差が出ることがあります。 賞与の手取りを左右しているのは、額面ではなく前月の給与・扶養家族・甲欄/乙欄の区別・社会保険料の上限といった、 いくつもの要素。本記事では、ボーナスの手取りを決めている要素をひとつずつ解剖して、最後に精算される年末調整までたどっていきます。
ボーナスの税率は、前月の給与で決まる
賞与から引かれる所得税には、毎月の給与とは別の仕組みが使われています。 月給で使うのは「月額表」、賞与で使うのは「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」。 月給は表から「税額(円)」が直接出るのに対し、賞与は表から「税率(%)」が出てきて、それを賞与額に掛ける形になります。
| 項目 | 月給の源泉徴収 | 賞与の源泉徴収 |
|---|---|---|
| 使う表 | 月額表 | 算出率の表 |
| 求めるもの | 税額(円) | 税率(%) |
| 基準 | 当月の給与額 | 前月の給与額 |
ここで言う「前月の給与」とは、賞与の支給月の前月に支払日があった給与のこと。 たとえば6月10日に夏のボーナスを受け取るなら、5月に支払日があった給与が基準になります。 前月に給与が2回支給されていた場合は、後に支払われたほうを使います。
ちなみに「ボーナスからの天引きは毎月の給与より割合が高い」と感じる方は多いですが、これには理由があります。 賞与の税率は前月給与×12カ月の年収ベースに近い実効税率を取りに行く設計になっているため、 月給の段階的な徴収より一度の負担が重く見えるのです。年間トータルでは12月の年末調整で帳尻が合うように設計されているので、損をしているわけではありません。

(賞与の源泉徴収税率の全体イメージ)
これが、扶養控除等申告書を提出している人(甲欄)が使う実際の税率表です。
| 前月給与(社保控除後) | 0人 | 1人 | 2人 | 3人 |
|---|---|---|---|---|
| ~68千円未満 | 0% | 0% | 0% | 0% |
| 68千~79千円 | 2.042% | 0% | 0% | 0% |
| 79千~94千円 | 4.084% | 2.042% | 0% | 0% |
| 94千~252千円 | 6.126% | 2.042% | 0% | 0% |
| 252千~300千円 | 8.168% | 4.084% | 2.042% | 0% |
| 300千~334千円 | 10.210% | 6.126% | 4.084% | 2.042% |
| 334千~363千円 | 12.252% | 8.168% | 6.126% | 4.084% |
| 363千~395千円 | 14.294% | 10.210% | 8.168% | 6.126% |
| 395千~427千円 | 16.336% | 12.252% | 10.210% | 8.168% |
| 427千~550千円 | 18.378% | 14.294% | 12.252% | 10.210% |
| 550千~600千円 | 20.420% | 16.336% | 14.294% | 12.252% |
| 600千~728千円 | 22.462% | 18.378% | 16.336% | 14.294% |
| 728千~781千円 | 24.504% | 20.420% | 18.378% | 16.336% |
| 781千~856千円 | 26.546% | 22.462% | 20.420% | 18.378% |
| 856千~1,028千円 | 28.588% | 24.504% | 22.462% | 20.420% |
| 1,028千~1,256千円 | 30.630% | 26.546% | 24.504% | 22.462% |
| 1,256千~1,740千円 | 32.672% | 28.588% | 26.546% | 24.504% |
| 1,740千~2,526千円 | 35.735% | 31.672% | 28.588% | 26.546% |
| 2,526千~3,495千円 | 38.798% | 35.735% | 31.672% | 28.588% |
| 3,495千円以上 | 45.945% | 41.868% | 38.798% | 35.735% |
💡 ポイント:扶養親族が4人以上の場合は、国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の原本をご参照ください。上記は代表的な0~3人の抜粋です。
扶養親族が多いほど、税率は階段状に下がっていく
この表をよく見ると、同じ前月給与の行でも、扶養親族の人数が増えるたびに税率が階段のように下がっていく構造になっています。 前月給与30万円帯(300千~334千円)であれば、扶養0人なら10.210%、1人で6.126%、2人で4.084%、3人で2.042%。 家族構成が違うだけで、同じボーナス額面でも手取りに大きな差が生まれる仕組みです。
実際にどう変わるのか、2つの例で確認してみましょう。
例①:扶養3人で税率0%
前月の社保控除後給与 285,454円、扶養親族 3人、賞与の社保控除後金額 400,000円
→ 前月給与「252千~300千円」の行 × 扶養3人 = 税率 0%
→ 400,000円 × 0% = 源泉徴収税額 0円
例②:扶養0人で税率12.252%
前月の社保控除後給与 350,000円、扶養親族 0人、賞与の社保控除後金額 600,000円
→ 前月給与「334千~363千円」の行 × 扶養0人 = 税率 12.252%
→ 600,000円 × 12.252% = 源泉徴収税額 73,512円
この2つの例の差は、扶養親族の人数だけ。前月給与の帯が違うのも、現実によくあるバリエーションです。 扶養控除等申告書に書く扶養親族の数は、年の途中で変わることもあります。子の出生や独立、配偶者の収入変動などがあったときは、 勤務先に申告書の修正を出しておくと、賞与のたびに正しい税率が当たります。
甲欄か乙欄かで、税負担は天と地ほど変わる
ここまでは「甲欄」——つまり、扶養控除等申告書を提出している前提でお話してきました。 ところが申告書を提出していないと、「乙欄」という別の表が適用されます。乙欄の税率は次のとおり、最低でも10.210%、最高は45.945%。 甲欄に比べて圧倒的に重い負担になります。
| 前月給与(社保控除後) | 税率 |
|---|---|
| 224千円未満 | 10.210% |
| 224千~295千円 | 20.420% |
| 295千~527千円 | 30.630% |
| 527千~1,118千円 | 38.798% |
| 1,118千円以上 | 45.945% |
⚠️ 注意:乙欄は扶養控除等申告書を提出していない場合に適用されます。 副業先の賞与や、主たる給与先に申告書を出していない場合は乙欄が適用されるため、税率が大幅に高くなります。
厄介なのが、副業先や転職直後など、うっかり申告書を出し忘れたまま賞与日を迎えるケース。 この場合は乙欄が適用されてしまい、本来支払う必要のない多額の所得税が天引きされます。 出し忘れに気づいたら速やかに勤務先へ提出して、年末調整で精算してもらうのが基本です。 なお、2か所以上から給与を受けている人は、主たる給与の支払者にのみ申告書を出すルールであることも押さえておきましょう。
額面の裏で引かれている、社会保険料には上限がある
賞与から引かれるのは所得税だけではなく、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料も加わります。 これらは月給とは別の計算方法が使われ、標準賞与額(賞与額の千円未満を切り捨てた額)に保険料率を掛けて算出します。
| 保険料の種類 | 料率(2026年目安) | 上限 |
|---|---|---|
| 健康保険料(折半) | 約5% | 年度の累計573万円 |
| 厚生年金保険料(折半) | 9.15% | 1回150万円 |
| 雇用保険料(本人負担) | 0.6% | 上限なし |
意外と知られていないのが、社会保険料には上限があること。厚生年金保険料は1回の賞与につき150万円が上限(標準賞与額の上限)、 健康保険料は年度の累計額が573万円(協会けんぽの場合)が上限です。 例えば賞与が200万円であっても、厚生年金保険料の計算ベースは150万円までで止まります。 高額賞与の人ほど、額面に対する保険料負担の比率は下がっていくわけです。
それでは実際にいくら手元に残るのか、典型的なケースの早見表で見てみましょう。
| 賞与額面 | 社会保険料 | 源泉徴収税 | 手取り概算 |
|---|---|---|---|
| 200,000円 | 29,500円 | 17,432円 | 153,068円 |
| 300,000円 | 44,250円 | 26,148円 | 229,602円 |
| 500,000円 | 73,750円 | 43,580円 | 382,670円 |
| 800,000円 | 118,000円 | 69,729円 | 612,271円 |
| 1,000,000円 | 147,500円 | 87,161円 | 765,339円 |
| 1,500,000円 | 221,250円 | 130,742円 | 1,148,008円 |
| 2,000,000円 | 295,000円 | 174,322円 | 1,530,678円 |
※ 社会保険料は標準的な料率(健保5%+厚生年金9.15%+雇用保険0.6%=14.75%)で概算。税率は甲欄・扶養0人・前月給与300千円帯(10.210%)を使用。
あなたの賞与額・前月給与・扶養人数で、手取りを試算する
前月給与・扶養親族数・賞与額を入力するだけで自動計算。特殊ケース(前月給与0円・10倍超)にも対応しています
前月給与の10倍超や、入社直後は計算ルートが変わる
ここまでが通常パターン。ただし現実には、算出率の表をそのまま使えない特殊なケースもあります。 代表例が、入社直後でいきなり賞与が支給されるケース(前月給与ゼロ)と、賞与が前月給与の10倍を超えるほど大きいケースです。

(賞与の源泉徴収税 計算フロー)
前月の給与がゼロの場合は、算出率の表ではなく月額表を経由する方式に切り替わります。
① 賞与(社保控除後)÷ 6(前回の賞与から6ヶ月以内の場合。7ヶ月以上なら ÷ 12)
② ①の金額を月額表(甲欄または乙欄)に当てはめて税額を求める
③ ②の税額 × 6(または12)= 源泉徴収税額
賞与の社保控除後額が前月給与の社保控除後額の10倍を超える場合も、同じく月額表を使った特殊計算になりますが、前月給与を加算する一手間が入ります。
① 賞与(社保控除後)÷ 6(または12)
② ①の金額 + 前月の社保控除後給与
③ ②の金額を月額表に当てはめて税額(A)を求める
④ 前月の社保控除後給与を月額表に当てはめて税額(B)を求める
⑤(A − B)× 6(または12)= 源泉徴収税額
なお、「決算賞与」や「期末手当」「業績手当」など、名称が違っても支給形態が賞与であれば、算出方法は同じです。 ひとつ気をつけたいのが、前回の賞与から7ヶ月以上の間隔が空く場合。 前月給与ゼロの計算で割る数(÷6)が、÷12に変わります。年1回しか賞与が出ない会社は、この点を確認しておきましょう。
最終調整は、12月の年末調整に持ち越される
これまで述べた賞与の源泉徴収税は、あくまで概算です。1年の終わり、12月の年末調整で、生命保険料控除・住宅ローン控除・扶養家族の変動などを反映して、 年間の所得税が確定し、それまでに天引きされた金額との差額が精算されます。
- 還付されるケース:扶養家族が途中で増えた場合や、生命保険料控除・住宅ローン控除がある場合
- 追徴されるケース:年の途中で扶養家族が減った場合や、賞与の税率が実効税率より低かった場合
💡 ポイント:令和8年分以後「源泉控除対象扶養親族」の新区分が導入される予定です。16歳未満の扶養親族の取り扱いが変わる可能性があるため、最新情報をご確認ください。
ボーナスから引かれる金額の重さは、前月の給与・扶養家族の数・甲欄/乙欄の区分・社会保険料の上限など、複数の要素で決まっています。 どれかひとつでも条件が変われば、手取りも大きく変わる仕組みです。気になる方は計算ツールで自分のケースを入れて、 次の賞与日の手取りをあらかじめ把握しておくと安心です。
【免責事項】
本記事の内容は2026年3月時点の情報に基づく概算です。 税法は毎年改正されるため、今後変更の可能性があります。 実際の税額・手続きについては、所轄の税務署または税理士にご確認ください。 本記事の情報と実際の税務処理が異なった場合、当サイトは責任を負いかねます。
参考資料
- ・国税庁「No.2523 賞与に対する源泉徴収」
- ・国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表」
- ・国税庁「No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」
- ・全国健康保険協会(協会けんぽ)「賞与にかかる保険料」