失業保険(基本手当)完全ガイド【2026年版】

高橋 健太 (Kenta Takahashi)
金融機関での実務経験を活かし、難しい税金や社会保険の仕組みを「誰にでも分かりやすく」解説することをモットーに活動しています。CalcEasyでは、ユーザーの皆様が自分のお金や制度について正確にシミュレーションできるよう、コンテンツの監修とツール設計のサポートを行っています。

退職が決まった。次の仕事はまだ見つかっていない。 口座残高を見ながら、来月の家賃を払えるだろうかと不安が止まらない——
そんなとき、あなたを支えるためにあるのが失業保険(基本手当)です。 毎月の給料から天引きされていた雇用保険料が、ここでようやく役に立ちます。 この記事では、受給資格の確認から申請手順、給付額の早見表まで、退職後に知っておくべきことをひと通りまとめました。
そもそも失業保険って、誰がもらえるの?
雇用保険(基本手当)を受け取るには、主に以下の要件が必要です。
- 就職意欲と就労能力:積極的に就職しようとする意思と、いつでも働ける能力があること(妊娠・出産・病気などで「すぐ働けない」場合は受給期間の延長手続きが必要です)。
- 被保険者期間:原則として離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上あること。会社都合退職(倒産・解雇等)の場合は離職日以前1年間に6ヶ月以上で対象となります。
実は、退職後すぐに働けない事情がある方も少なくありません。 病気・ケガ・妊娠・出産・育児などで「すぐに働けない」状態のときは、失業保険を受け取ることができません。 ただし、最大4年間(本来の受給期間1年+最大3年)の「受給期間の延長」を申請できます。 病気が回復して就職活動が可能になってから受給を開始できるので、「もらえない」のではなく「後から受け取れる」と考えてください。 ハローワークに申出書と医師の証明書を提出すれば手続きできます。
退職理由で、もらえる額も時期もここまで変わる
同じ「退職」でも、その理由が会社都合か自己都合かで、給付が始まるタイミングも日数も大きく変わります。

(離職票を受け取ったら、まずはハローワークへ行きましょう)
A. 会社都合退職(特定受給資格者)
倒産・解雇・事業縮小・会社都合による大幅な給与ダウンなどでやむを得ず退職した場合です。
- 給付制限:制限なし。最初の7日間の待期期間が過ぎれば、すぐに支給対象となります。
- 所定給付日数:年齢と勤続年数に応じて、最大330日分の保障が受けられます。
B. 自己都合退職
転職・新しい挑戦・帰省など、個人的な理由で退職した場合です。
- 給付制限:7日間の待期期間の後、さらに原則2ヶ月間は受け取れない「給付制限」があります。
- 所定給付日数:勤続年数に応じて90日〜最長150日。
意外と知られていませんが、自己都合退職でも給付制限が免除されるケースがあります。 体力的・精神的な病気やケガ、職場でのハラスメント、配偶者の転勤による引越し、親の介護などが理由であれば、「特定理由離職者」と認定され、会社都合と同じ扱いになる可能性があります。 ハローワークに退職の経緯を正直に伝え、診断書や客観的な証拠があれば提出しましょう。
あなたは何日分もらえる?給付日数早見表
給付日数は退職理由・年齢・被保険者期間(雇用保険の加入期間)によって決まります。 まずは自分がどこに当てはまるか、下の表で確認してみてください。
(1) 会社都合退職(特定受給資格者・特定理由離職者)
| 年齢 | 1年未満 | 1〜5年 | 5〜10年 | 10〜20年 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | — |
| 30〜34歳 | 90日 | 90日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35〜44歳 | 90日 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45〜59歳 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60〜64歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
出典:厚生労働省「雇用保険制度の概要」(令和7年8月1日改定)
(2) 自己都合退職(一般受給資格者)
| 被保険者期間 | 全年齢共通 |
|---|---|
| 1年未満 | 受給資格なし |
| 1年以上〜10年未満 | 90日 |
| 10年以上〜20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
⚠️ 注意:自己都合退職には原則2ヶ月の給付制限があります。ただし「正当な理由のある自己都合」(病気・ハラスメント・配偶者の転勤等)は特定理由離職者となり、制限なしで給付を受けられる場合があります。
よく聞かれるのが、60歳の定年退職のケースです。 60歳以上65歳未満で離職した場合は、一般の失業保険と同様に申請できます。 日額上限は7,623円(令和7年8月1日改定)で、給付日数は上の表のとおり勤続年数で決まります。 なお65歳以上で離職した場合は「高年齢求職者給付金」として一時金(30日分または50日分)を受け取る形になります。
月にいくらもらえる?日額と給付率のしくみ
基本手当は前職の給与がそのまま出るわけではなく、離職前6ヶ月の賃金をもとに計算されます。 給付率は賃金の高低によって50%〜80%の間で変動し、高収入ほど率が下がります。 さらに年齢ごとに日額の上限が設けられています。
基本手当日額の上限額(令和7年8月1日改定)
| 年齢 | 日額上限 | 月額換算(×30日) |
|---|---|---|
| 29歳以下 | 7,255円 | 約217,650円 |
| 30〜44歳 | 8,055円 | 約241,650円 |
| 45〜59歳(最高) | 8,870円 | 約266,100円 |
| 60〜64歳 | 7,623円 | 約228,690円 |
※上限額は毎年8月1日に改定されます。月額換算はあくまで目安です(実際の認定日数により変動します)。
💡 ポイント:賃金日額が5,340円以下の場合は80%の給付率が適用されます(月収約160,200円以下が目安)。高収入者ほど給付率は低下し、上限額に到達すると上限が適用されます。
ハローワーク、何を持って行けばいい?
離職票が手元に届いたら、なるべく早くハローワークへ行きましょう。 申請が遅れると給付開始もその分だけ後ろ倒しになります。
必要書類
- 雇用保険被保険者離職票(1・2):退職後10日前後に会社から郵送されます
- マイナンバーカード(または通知カード+身分証)
- 証明写真(縦3.0cm×横2.5cm)2枚
- 本人名義の普通預金通帳またはキャッシュカード
- 印鑑
申請の流れ
離職票の受け取り
退職後、会社から「雇用保険被保険者離職票(1・2)」が郵送されます(通常10日前後)。
ハローワークで求職申込み・受給資格の申請
住所管轄のハローワークへ出向き、求職申込書を記入・提出します。離職票を提出して受給資格の確認を受けます。
7日間の待期期間
申請日から7日間は「待期期間」として給付されません。この期間中はアルバイト等も禁止です。
雇用保険受給者初回説明会への参加
指定日に「雇用保険受給者初回説明会」へ参加。受給資格者証と失業認定申告書が交付されます。
4週間ごとの認定日に来所・給付開始
原則4週間ごとの「認定日」にハローワークへ来所し、求職活動の実績を申告します。認定後、数日以内に指定口座へ振り込まれます。
ここで気をつけたいのが、給付中のアルバイトの扱いです。 待期期間(7日間)中はアルバイト禁止ですが、それ以降は1日4時間未満の短時間労働であれば「内職・手伝い」として申告しながら給付を受け取れる場合があります。 ただし1日4時間以上や継続的な就労は「就職」とみなされる可能性があるため、認定日に必ず正直に申告してください。 申告漏れは不正受給となり、返還・3倍返し・刑事罰の対象になります。
最初の振込はいつ届く?タイムライン早見表
| 時期 | イベント | 会社都合 | 自己都合 |
|---|---|---|---|
| 離職日 | 退職・離職票受け取り開始 | 同じ | |
| 離職後〜 | ハローワークへ申請 | なるべく早く(遅れると給付開始が遅れます) | |
| 申請日〜7日後 | 待期期間(7日間) | 給付なし(アルバイト禁止) | |
| 待期満了後 | 給付制限 | なし(即給付対象) | 2ヶ月間(給付制限) |
| 初回振込 | 最初の給付 | 申請後約4〜5週間 | 申請後約3ヶ月〜 |
「損してた」と後悔する前に — 再就職手当の話
「失業保険が90日分あるから、3ヶ月ゆっくりしてから働こう」—— そう考える方は少なくありません。でも、それはかなりもったいない選択かもしれません。

(早期の再就職に成功すると、お祝い金として「再就職手当」が支給されます)
国は早期の職場復帰を推進しており、失業保険の給付日数を多く残した状態で新しい仕事を見つけると、 残りの日数の代わりに「再就職手当(就職祝い金)」をまとまった金額で受け取れます。
- 所定給付日数の残りが3分の2以上ある場合:支給残日数の70%の額を一括受給
- 所定給付日数の残りが3分の1以上ある場合:支給残日数の60%の額を受給
再就職手当は非課税のため、失業保険を使い切るより早く新しい月給を得ながら手当を受け取る方が、 金銭的メリットが大きいことが多いです。
では再就職手当、具体的にどう申請するのか。 再就職が決まり、採用から1ヶ月以上の雇用が続くことが確認されてからハローワークへ申請します。 採用日から1ヶ月後以降、採用から2年以内に「再就職手当支給申請書」と採用証明書等を提出してください。 申請が遅れると受け取れなくなる場合があるので、就職が決まったらすぐにハローワークへ連絡しましょう。
ちなみに、再就職手当の対象にならなかった場合でも、給付日数の残りが所定日数の1/3未満であれば「就業手当」(1日当たり基本手当日額の30%)が受け取れる場合があります。 いずれにせよ、再就職が決まったらすぐにハローワークへ申告することが大切です。
退職したら、まずやることリスト
離職票が届いたら、すぐにハローワークへ。申請が遅れるほど、初回振込も遅くなります。
退職理由に納得がいかない場合は、窓口で相談。「特定理由離職者」に認定されれば、給付制限なし・給付日数増の可能性があります。
給付中の収入(アルバイト等)は必ず申告。黙っていると不正受給になります。
早めの再就職は「手当」として返ってくる。給付日数を残して就職すると、再就職手当がもらえます。
不安な気持ちは、動くことで少しずつ軽くなります。 まずはハローワークの窓口に足を運んでみてください。
【免責事項】
本記事の内容は2026年3月時点の情報に基づく概算です。 給付日数・日額の上限は毎年8月1日に改定されるため、最新情報はハローワークまたは厚生労働省の公式資料でご確認ください。 個別のケースについては管轄のハローワーク窓口にご相談ください。
参考資料
- ・厚生労働省「雇用保険制度の概要」
- ・厚生労働省「令和7年8月1日からの基本手当日額の上限額・下限額の変更について」
- ・ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- ・厚生労働省「再就職手当の支給に関する省令」